Research Performance
研究実績
第2回日本眼光学学会学術論文賞 平岡孝浩 – 研究実績
2015年9月26~27日に岡山コンベンションセンターで開催された第51回日本眼光学学会総会において,上記の授賞と記念講演の機会を賜りました.実は第1回の同賞にも別の論文で応募したのですが,その際は次点で落選してしまいました.応募資格に年齢制限がある賞なので挑戦できるチャンスはそう多くはありません.そこで今回満を持して再挑戦したわけですが,何とか受賞することができました.以下に受賞論文のサマリーを掲載させていただきます.
Influence of ocular wavefront aberrations on axial length elongation in myopic children treated with overnight orthokeratology.(オルソケラトロジー治療中の近視学童において眼球波面収差が眼軸長伸長に及ぼす影響)
Hiraoka T, Kakita T, Okamoto F, Oshika T
Ophthalmology122:93-100, 2015.
「オルソケラトロジー(OK)2年間継続による眼軸伸長抑制効果について,Choら(Curr Eye Res. 2005)は 46%,Wallineら(BJO.)は56%,Kakitaら(IOVS. 2011)は36%と報告している.最近のrandomized clinical trialでは,43%の抑制効果が確認された(Cho et al, IOVS. 2012).またpartialreduction OK(強度近視眼に対してOKで4Dだけ部分的に近視矯正を行う)においても,極めて強い抑制効果(63%)が報告された(Charm et al. Optom Vis Sci. 2013).このように臨床的に有望な抑制効果が認められている反面,そのメカニズムは十分に解明されていない.そこで本研究では,様々な光学パラメータと眼軸長伸長の関連を詳細に検討した.
1年間の前向き研究を完了した55例(平均年齢10.3 ± 1.4)のデータを解析したところ,多変量解析において眼軸長伸長と最も関連する要因として選択されたのはコマ様収差の変化量であった.従来の仮説として,周辺部網膜の遠視性デフォーカスがOKにより改善することが近視進行抑制に働くという理論(軸外収差理論)が支持されてきたが,これに基づけば,周辺部網膜の屈折が全周性に近視化するため点対称な成分である球面収差が重要な役割を果たすはずである.しかし,今回の検討では球面収差は全く関連せず,コマ様収差(非対称性成分)が増加している症例ほど抑制効果が強くなるという結果となり,従来の仮説とは異なるメカニズムで近視進行抑制効果が発現されていることが示唆された.コマ収差は偽調節量を増加させるという報告が複数あり,OK治療眼においても角膜多焦点性や偽調節量が増加することにより調節(毛様体筋)への負荷が軽減し,これが近視進行抑制効果をもたらしているという新しいメカニズムを考按した.」
以上,学術奨励賞受賞とそれに伴うCLAOでの講演について報告させていただきましたが,この元となった研究に関しては大鹿教授をはじめとして数多くの方々のご協力を得て成し遂げることができました.この場をお借りしてサポートしていただいた全ての方々に心よりお礼申し上げます.今後もこの受賞に恥じないように,そしてより良い研究ができるように努力していきたいと思います.
上記の論文作成にあたり御協力いただいた柿田哲彦先生,岡本史樹先生,そして御指導いただいた大鹿哲郎教授にこの場を借りて深謝申し上げます.