Research Performance
研究実績
網膜硝子体疾患における治療前後の視機能の検討
患者募集 終了
【背景】
視機能は色覚、光覚、視野、立体視、変視、形態覚など、様々な要素から成り立っている.”視力”という指標は視機能の中では形態覚の一部を表しているにすぎない.白内障手術後の視機能は視力,変視,立体視,コントラスト感度など,多方面から評価されてきた.一方で,網膜硝子体疾患における網膜硝子体手術や硝子体注射は,これまで視力や視野といった指標でしか論じられてこなかった.この原因は,対象となる網膜硝子体疾患が,他の眼科疾患と比較し,視機能予後が悪いためである.近年,治療技術の進歩により網膜硝子体疾患の視力予後が大きく改善した.そのため,網膜硝子体疾患領域でも視力以外の視機能評価が重要になると考えられている.
今回我々が立案した研究の概要は,そのような治療技術の進歩とともに,術後の様々な視機能を評価することにある.
【目的】
様々な網膜硝子体疾患(黄斑円孔,黄斑前膜,糖尿病網膜症,嚢胞様黄斑浮腫,裂孔原性網膜剥離,星状硝子体症,後発白内障に伴う硝子体混濁,網膜血管性疾患,網膜神経性疾患)に対して網膜硝子体手術(硝子体切除,強膜バックリング,内境界膜剥離,内境界膜翻転,シリコンオイル注入,ガス注入,嚢胞切除,嚢胞内房水注入,後嚢切除,網膜光凝固),硝子体注射(抗VEGF製剤)を行い,術前後の自覚的,他覚的視機能の経時的変化を評価すること.
主要評価項目:自覚的視機能検査(視力,実用視力,コントラスト感度,変視,不等像視,立体視,散乱,色覚,視野,網膜感度)
他覚的視機能検査(波面収差,角膜形状,網膜形態,網膜電図,水晶体混濁度)
【方法】
①対象
本臨床研究において対象となる被験者は、筑波大学附属病院眼科または筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター 総合病院水戸協同病院眼科に通院している患者の中から募集する。本臨床研究の対象として適応があると考えられる患者や、参加を希望する患者に対しては、主治医が、このプロトコール及び添付されている患者説明用資料等に基づいて説明を行う。患者の同意が得られた場合、必要な患者データ等も追加して討議し、最終的に臨床研究の対象となる患者を選定する。選定された患者に対し、担当医師が患者説明用資料(「説明及び同意書」)を用いて臨床研究の内容について十分な説明を受けた後に、患者が自己の意思により本臨床研究の参加に文書で同意した場合のみ被験者として登録される。
適格条件:
(1)原則として網膜硝子体疾患を有し治療が必要と確認されている症例
(2)対象となる網膜硝子体疾患は黄斑円孔,黄斑前膜,糖尿病網膜症,嚢胞様黄斑浮腫,裂孔原性網膜剥離,星状硝子体症,後発白内障に伴う硝子体混濁,網膜血管性疾患,網膜神経性疾患とする
(3)年齢 20歳以上 85歳未満
(4)他に重篤な疾患を合併していない
(5)病名・病状を告知されており,本臨床研究に参加することに同意している
不適格条件:
(1)網膜疾患以外に視機能を悪化させるような他の眼科疾患を合併している症例
(2)上記以外に、研究担当医師が対象として不適当と判断した患者
②検査項目、検査時期
A. 屈折視力検査 (KR-8100; TOPCON)(術前,後1日, 1,2週, 1~12ヶ月の毎月)
B. 実用視力(AS-4F; KOWA) (術前,後1〜12ヶ月の毎月)
C. コントラスト感度(CSV-1000; Vector Vision) (術前,後1〜12ヶ月の毎月)
D. 変視量測定 (M-CHARTS; はんだや,Aniseikonia Test; はんだや) (術前,後1~12ヶ月の毎月)
E. 不等像視(New Aniseikonia Test; イナミ)(術前,後1,3,6,12ヶ月)
F. 立体視力 (TNO, TST; はんだや) (術前,後1,3,6,12ヶ月)
G. 散乱 (C-Quant80000; OCULUS) (術前,後1日, 1,2週, 1~12ヶ月の毎月)
H. 色覚(術前,後1,3,6,12ヶ月)
I. 静的視野(術前,後1,3,6,12ヶ月)
J. 網膜感度(MP-3; ニデック) (術前,後1日, 1,2週, 1~12ヶ月の毎月)
K. 波面収差(KW-9000; トプコン) (術前,後1,3,6,12ヶ月)
L. 角膜形状 (3次元前眼部光干渉断層計(CASIA);トーメー,前眼部形状解析装置(TMS-5);トーメー) (術前,後1,3,6,12ヶ月)
M. 網膜形態(SD-OCT Cirrus; Zeiss, DRI OCT1;トプコン) (術前,後1日, 1,2週, 1~12ヶ月の毎月)
N. 網膜電図(VERIS; トーメー,) (術前,後1,3,6,12ヶ月)
O. 水晶体混濁度(EAS1000; ニデック) (術前,後1,3,6,12ヶ月)
検査に使用する機器,指標は全て市販されているものであり,他の眼科領域の患者に使用されているものである.また,使用する機器はいずれも非接触であるため点眼麻酔薬を必要とせず患者に不快な思いをさせる事がなく、さらに感染のリスクがないと考えられる.
また,本研究の対象者は,通常でも治療後は毎月来院し検査を行うので,本研究に参加することで通常より来院回数が増えることはない.上述した検査項目の中で,通常の保険診療として行う検査はA,B, L,Mの検査である.術後1日,1週,2週は通常と同じく30分,術後1ヶ月は通常より長く100分程度,術後2ヶ月目以降は通常より長く,来院ごとに約60分の検査時間を要する.
【症例数】
全体目標症例数430症例(黄斑円孔70例,黄斑前膜70例,糖尿病網膜症70例,嚢胞様黄斑浮腫70例,裂孔原性網膜剥離70例,星状硝子体症20例,後発白内障に伴う硝子体混濁20例,網膜血管性疾患20例,網膜神経性疾患20例)