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Research Performance

研究実績

「多焦点SCLとアトロピン点眼による近視進行抑制」 臨床試験への参加者大募集 (平岡孝浩)

試験名;近視学童に対する多焦点コンタクトレンズ及び0.01%アトロピン点眼薬の近視進行抑制効果と安全性に関する臨床研究
(認定臨床研究承認番号:TCRB19-022)(単施設,ランダム化,二重盲検,プラセボ対照,並行群間比較試験)

【背景と目的】
 近年,多焦点SCLの装用による近視進行抑制効果が多数報告されるようになりました.欧米では既にMiSight®(クーパービジョン)という多焦点SCLが承認を受け市販されています.低濃度(0.01%)アトロピン点眼薬に関しては,シンガポールで行われたATOMスタディが有名ですが,本邦で行われた多施設共同研究(ATOM-Jスタディ)でも有効性と安全性が確認されました.現在,参天製薬が治験を行っており,本邦で正式に承認される日もそう遠くないと考えられます.
さらにオルソケラトロジーと0.01%アトロピン点眼の併用療法が,相加的に働くことも本邦の2つの研究で明らかにされました(Kinoshita N, et al. Jpn J Ophthalmol. 2018)(Kinoshita N, et al. Sci Rep. 2020).
今回,これらの報告をもとに,多焦点SCLと0.01%アトロピン点眼薬の近視進行抑制効果を検討するため,以下に掲げた仮説を検証します.

【研究仮説】
 近視学童を対象として,次の4群(A~D)に群分けして
A群:多焦点SCL装用+0.01%アトロピン点眼薬投与群
B群:多焦点SCL装用+プラセボ点眼薬投与群
C群:単焦点SCL装用+0.01%アトロピン点眼薬投与群
D群:単焦点SCL装用+プラセボ点眼薬投与群

12か月の治療効果を比較すると,多焦点SCL装用は単焦点SCL装用よりも有意な近視進行抑制効果が認められ(A群+B群>C群+D群),またアトロピン点眼はプラセボ点眼よりも有意な近視進行抑制効果が認められ(A群+C群>B群+D群),さらに多焦点SCLとアトロピン点眼の相加効果が認められる(A群>B群,A群>C群).

【参加者の選定】
 軽度又は中等度近視(他覚的等価球面度数:-1.00D-6.00 D)と診断され,同意(アセント)取得年齢が612(小学校1年生~6年生)の男女学童を対象とします.選択基準と除外基準は以下の通りです.

⇒選択基準
1) 同意取得時年齢が6~12歳(小学校1年生~6年生)の男女学童
2) 過去1年間の学校健診における視力判定で視力低下が認められる
3) 調節麻痺下における両眼の屈折検査結果が,以下を満たす
・両眼とも等価球面度数が-1.00Dから-6.00Dの範囲内
・左右眼の等価球面度数の差が50D以内
・乱視度数が±1.00D以内
4) 調節麻痺の施行が可能
5) 本実施計画書に則った来院診察を受けることができる
6) 本研究の参加に対して本人及び親権者から書面による同意が得られる

⇒除外基準
1) 両眼視機能が異常(Titmasストレステスト5/9未満)
2) 弱視(矯正視力1.0未満)又は顕性斜視
3) 眼鏡をかけて測定した矯正視力が1.0未満
4) 眼圧に異常がある
5) 調節麻痺下及び非調節麻痺下での等価球面度数の差が両眼各々1.50 D以上
6) 近視以外の眼関連疾患を有する
7) 視力又は屈折度数に影響を与える可能性のある眼関連,全身性疾患を有する
8) これまでに多焦点コンタクトレンズ,二焦点メガネ,累進多焦点レンズ,オルソケラトロジーレンズ,薬物治療等の近視治療を受けたことがある
9) その他,研究責任(分担)医師が本研究の対象として不適当と判断

※注意点
多焦点SCLと単焦点SCL(対照レンズ)のどちらを装用するかは,データセンター(メディカルエッジ株式会社)で無作為に割付されます.低濃度アトロピンとプラセボ(対照薬)に関しても同様です.患者様も担当医師も選択することができませんので御承知おき下さい.もし対照群に割り振られたとしても,個別に処方した最適なコンタクトレンズが無償で提供され,度数が変化しても試験期間内は適宜再処方を受けることができるというメリットがあります.

【試験方法】

来院スケジュールと実施予定の検査

登録時

(初診時)

試験期間
装用/投与

開始2週後

装用/投与

3か月

装用/投与

6か月

装用/投与

9か月

装用/投与

12か月終了観察

装用/投与

(中止時)

来院の許容範囲装用開始後

7~35日

±4週±4週±4週
同意取得
適格性の確認
被験者背景
試験機器処方
試験薬処方
試験薬の点眼状況
診察
(自覚症状,他覚所見)
装用状況調査
視力検査

(裸眼視力,矯正視力)

屈折検査
波面センサー
眼軸長測定
併用療法
安全性
有害事象・不具合

⇒目標症例数:A~D群→各60例,合計240例
割り当てられたSCLと点眼薬1年間使用していただきます.オートレフラクトメータを用いて,調節麻痺下の屈折状態を精密に解析し,裸眼および矯正視力を測定します.同時にIOLマスターを用いた眼軸長測定を実施します.両測定を各レンズ装用12ヶ月間において定期的に測定し,近視の進行度合いを解析します.

【試験の判定】
取得したすべての結果をデータセンター(メディカルエッジ株式会社)が解析し,上記の仮説を統計学的に判定します.

【試験期間】
患者さんの参加期間は2024年12月までです.毎週月曜,火曜,水曜,金曜の午後に特殊外来枠(近視進行抑制外来)を開設しております.ご希望の患者様はぜひ御参加ください(ご希望の患者様がいらっしゃいましたら,是非ご紹介ください).症例登録期間20219月~202412末の予定

【研究助成】
この研究はJohnson and Johnson Vision Care(米国)から助成を受けて実施します.使用するSCLは,ワンデーアキュビューモイスト®マルチフォーカル®(J&J)とワンデーアキュビューモイスト®(J&J)となります.

【連絡先】
筑波大学医学医療系眼科 准教授 平岡孝浩
tel/fax 029-853-3148   e-mail: thiraoka@md.tsukuba.ac.jp