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Research Performance

研究実績

コンタクトレンズの臨床研究 – 研究紹介

筑波大学では平岡孝浩講師,木内岳医員が中心となってコンタクトレンズの臨床研究を進めています.多くは近視進行抑制に関する研究ですが(近視進行抑制研究のパートを御参照ください),ここ数年来,特殊ソフトコンタクトレンズ(SCL)を用いた円錐角膜眼の矯正を行っております.いわゆるハードコンタクトレンズ(HCL)不耐症の患者を対象とした処方になりますが,ケラソフト®IC(ボシュロム社)という国内未承認の特殊SCLを使用しておりました.通常,円錐角膜眼にはHCL処方が第一選択となりますが,強い違和感や痛みにより装用を継続できない症例が少なくありません.このようなHCL不耐症患者は有効な矯正用具が得られず,裸眼で非常に不便な生活を送るか,角膜移植を受けるといった選択肢しかありませんでした.ケラソフト®ICレンズはcomfort(装用感)を重視したレンズであり,円錐角膜眼をはじめとする不正乱視眼に広く対応しており,角膜移植眼への処方も可能です.本製品の登場によりHCL不耐症患者への矯正が可能となり,対象患者には大きな福音となったわけです.当初から本製品の処方はボシュロム社の全面的な協力を得て実施しておりましたが,残念なことに諸事情によりボシュロム社が本レンズを扱わなくなったため,その後のレンズの供給が得られず2017年末には一旦処方を終了しました.

そのような背景の中,本邦のトーメーコンタクトレンズ社が独自のデザインによる特殊形状角膜用SCL(ユーソフト®)を開発したため,2018年に入ってからユーソフト®の処方を開始しました.まずは,以前にケラソフト®ICを処方していた方々に評価してもらったところ,従来品に匹敵する有用性が確認できたため,現在では新規の患者様にも処方を開始しております.少しずつではありますが症例が蓄積されてきており,さまざまな臨床評価も可能となってきました.安全性に関しても現在まで問題となった症例は経験しておりませんが,今後さらに詳細な検討を行い学会発表や論文投稿を行っていきたいと考えております.

本研究を通して最も強く感じたことは,患者にとってcomfortは極めて重要なファクターであるということです.単に視機能を比較しただけではHCLに軍配が上がると思いますが,多くの患者様は特殊SCLを好むということです.つまり患者のQOLにとってQOVよりもcomfortが勝るという現実を体験し,視機能がよければ全てよしという考えは成立しないということを痛感しました.
筑波大学ではHCL不耐症でお困りの患者様に対して,今後もユーソフト®の処方を継続して参りますので,対象の患者様がいらっしゃいましたら是非ご紹介ください.