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Research Performance

研究実績

緑内障に関するAI研究開発

 筑波大学眼科では,緑内障に関するAI研究開発を,髙橋秀徳教授,上野勇太講師,大学院生伊藤賀一,AIモデル開発者の古山誠医師(南子安眼科)を中心に進めています.現在は,自治医科大学,島根大学,愛知医科大学の研究者の先生方に共同研究に参加していただき,さらに他大学との研究協力も協議を進めています.
 緑内障は不可逆的な視機能障害を引き起こす眼疾患です.日本を含む世界各国で失明の主要な原因の1つで,高齢化の進展とともに患者数の増加が予想されています.そのため,早期診断と適切な治療介入が極めて重要です.視野検査は緑内障の診断や病状評価に不可欠ですが,検査に時間を要し,高度な集中力が必要となるため,患者さんと検査をする視能訓練士の双方に大きな負担となっています.一方、光干渉断層計(OCT)は,短時間で非侵襲的に網膜や視神経乳頭の形状を客観的に評価できる機器であり,緑内障診療における重要なツールとなっています.

 我々は,OCTで撮影した網膜の3次元画像から24度および10度の中心視野を高精度で推測できるAIモデルの開発研究を進めています(日本の眼科 2022).3次元画像を用いたモデルは、合併疾患の有無やOCT画像のノイズに対してより安定した精度で視野推定ができる可能性があります.また,従来の視野検査と比較して測定値のばらつきが少ない可能性が示唆されています.測定値のばらつきが少ないということは,より早期に緑内障の進行を検出できる可能性があることを意味しています.これにより,より適切なタイミングでの治療介入につながることが期待されます.
 本研究のAIモデルは,被検者の主観や個性による影響を受けないため,より客観的な視野の推測が可能です.これにより,患者さんや視能訓練士の負担を軽減しながら,視野検査の課題を補完することを目指しています.特に,視野検査を正確に行うことが困難な,小児や高齢者の緑内障患者さんの視野検査を定量評価するために有用である可能性があります.
 現在,AIモデルのさらなる研究開発を進めており,より多様な測定条件や機器での検証を行っています.この研究を通じて,緑内障診療における視野評価の新たな可能性を探求していきます.